不動産を相続した際、必要になる9つの書類を紹介します。
相続登記は義務ではありませんが、名義を確定させるメリットがあります。
逆に相続登記をしていない場合、不動産を売却できないなどのデメリットがあります。
不動産を相続した際に必要な書類を紹介し、売却するための流れまで知っておきましょう。
不動産相続の相続手続き
不動産相続をするには、以下の相続手続きが必要です。
- 戸籍の取得
- 相続人の調査
- 相続財産の調査・評価
- 遺産分割協議の実施
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金の解約手続き
- 不動産名義の変更
手続きに必要な書類があるため、以下で把握しておきましょう。
不動産相続で必要な書類9つ
不動産相続で必要な書類は、以下の9つです。
- 残高証明書
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書もしくは遺言
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産の登記事項証明書
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
それぞれ説明します。
残高証明書
不動産相続には、預貯金の残高証明書が必要です。
金融機関から受け取るもので、相続税の申告で使用します。
残高証明は通帳でも可能な場合が多いですが、ネット銀行などを使用している場合は残高証明書が必要となります。
被相続人の戸籍謄本
被相続人の戸籍謄本は、法定相続人を明らかにするために必要です。
被相続人が生まれてから死亡するまで、すべての戸籍謄本が求められます。
戸籍の様式は全国で統一されていますが、法改正により様式が変更されている可能性があります。
変更前の過去の様式で記録されている戸籍の証明書類を、改製原戸籍謄本と言います。
相続人全員の戸籍謄本
被相続人の戸籍謄本と同様に、法定相続人を明らかにするために用いられます。
被相続人の死亡が記載された戸籍謄本に相続人が記載されている場合、改めて戸籍謄本を取り寄せる必要はありません。
法定相続人が確定したら、相続人が現在生存していることを証明するため、現在の戸籍謄本が必要です。
遺産分割協議書もしくは遺言
遺産分割協議書は、相続人同士で遺産の分割について合意した結果を記録したものです。
遺言書がある場合、遺産分割協議書が必要ないこともあります。
話し合いを元に遺産分割を決定したことを証明するものですので、あらゆる手続きで必要になることが多いです。
相続人全員の印鑑証明書
印鑑証明書は、不動産やマンション、自動車の売買などに用いられる書類です。
印鑑が地方公共団体に登録されていることを証明できます。
相続登記を行う際、不動産を引き継ぐ相続人を含め、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。
被相続人の住民票の除票
被相続人が亡くなった際、死亡届を提出します。
提出した死亡届により、被相続人の住民登録が抹消されます。
抹消された住民票を除票と予備、相続手続きに必要になることがあります。
死亡した人の住民票の除票は、被相続人が最後に住んでいた市区町村で発行します。
住民票は原則として本人や同じ世帯の人しか受け取ることが出来ません。
そのため、除票が必要な場合は亡くなった人と関係がわかる戸籍などの提出を求められることがあります。
不動産の登記事項証明書
登記事項証明書は、登記されている名義人や権利関係が記載された書類です。
相続手続きでは、正確な不動産情報を記載する必要があります。
正確な記載がない状態では、相続や贈与の登記が補正・却下の対象になることがあります。
登記申請書
登記申請書は、相続登記をする際に必ず必要になる書類です。
法務局で手に入れることができますが、法務局のホームページからも取得可能です。
登記申請書には、以下の3種類があります。
- 遺産分割協議書で登記する場合
- 遺言で登記する場合
- 法定相続分で登記する場合
必要に応じた書類を選択し、丁寧に記載することが求められます。
固定資産評価証明書
登録免許税の計算に必要な書類です。
土地や建物が所在する市区町村役場で手に入れることができます。
複数の土地や建物を所有している場合、それぞれの市区町村で手続きが必要です。
不動産の相続手続き|相続登記とは
相続登記とは、不動産の名義を変更する手続きのことです。
一般的に相続登記と呼ばれていますが、正式には「相続による所有権移転登記」を指します。
不動産がある管轄の法務局で手続きを行います。
前述のとおり9つの書類を作成し、登記申請書とともに法務局に提出しましょう。
相続登記の手順
相続登記をするための手順を紹介します。
各々の書類を作成するため、おおまかな流れを把握しておくことをおすすめします。
以下の流れになります。
- 相続人の確定
- 遺産分割協議
- 遺産分割協議書を作成
- 登記申請
相続人を確定した後、相続人で遺産分割について話し合います。
不動産の所有権を相続する人を決定し、誰の名義にするか決めることを意味します。
その後、法務局に登記申請することになります。
相続登記をしないとデメリットがある
相続登記は義務ではないため、放置する人がいます。
しかし、デメリットがあるため相続登記をしておくことをおすすめします。
相続登記をしないデメリットとは、以下のものを指します。
- 不動産を売却できない
- 他の相続人に不動産を勝手に処分される可能性がある
- 不動産を差し押さえられる可能性がある
- 登記に必要な書類が入手困難になる
不動産を売却できない
相続登記をしていなければ、不動産を売却することができません。
また不動産を担保にして金融機関から融資を受けることもできません。
不動産の売却を検討していないとしても、何かあった場合を考えて相続登記をしておくことをおすすめします。
他の相続人に不動産を勝手に処分される可能性がある
相続登記をしていない不動産は、相続人全員が不動産を共有している状態です。
相続として不動産を受け取る際、一時的に法定相続分に応じて分配されているからです。
遺産分割協議で相続登記をしておき、誰に所有権があるか明確にしておきましょう。
不動産を差し押さえられる可能性がある
相続人に借金がある人がいて、支払いが滞っている場合があります。
前述のように、相続登記をしていないと相続人全員で不動産を共有している状態です。
そのため、相続人のうち誰かが差し押さえを受けた場合、不動産を差し押さえられる可能性があります。
登記に必要な書類が入手困難になる
相続登記には、亡くなった人の住民票(除票)が必要です。
しかし亡くなった人の住民票や戸籍謄本は、役所で以下のように保存期間が決まっています。
- 住民票(除票)の保存期間:5年
- 亡くなった人の戸籍:150年
除票を入手できる期間が5年であるため、期間を過ぎてからは入手できません。
法務局に相談するなど、複雑な手続きが必要になることがあります。
できるだけ早期に相続登記することをおすすめします。
不動産相続の相続税|計算方法
不動産を相続した場合、相続税を納めることになります。
以下の計算式を把握しておき、相続税がいくらになるか把握しておきましょう。
「相続税額=(すべての財産額−基礎控除額)×相続税率」
基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人数」で求めます。
最低でも3,600万円の基礎控除が受けられます。
相続税率は、以下の税率です。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
不動産相続時に相続税を引き下げる特例
不動産相続で相続税を引き下げる特例があります。
多額の相続税により、日常生活に支障がでないようにするためのものです。
例えば不動産相続により事業継続が困難になるなどを防ぐ制度と言えます。
以下のものを知っておきましょう。
小規模宅地特例
小規模宅地特例とは、一定の要件により減税を認められるものです。
小規模宅地特例を受けるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 特定事業用宅地等
- 特定居住用宅地等
- 特定同族会社事業用宅地等
- 貸付事業用宅地等
それぞれの減税を表にすると、以下のようになります。
特定事業用宅地等 | 限度面積400㎡まで80%減税 |
特定居住用宅地等 | 限度面積330㎡まで80%減税 |
特定同族会社事業用宅地等 | 限度面積400㎡まで80%減税 |
貸付事業用宅地等 | 限度面積200㎡まで50%減税 |
参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や住居の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
不動産を相続した後に売却する手順
相続した不動産を、相続後に売却する手順を紹介します。
事業や居住を検討しない場合、売却して資金にしようとする人が多いからです。
手順は以下のとおりです。
- 相続人を確定させる
- 名義を変更する
- 不動産会社などに依頼して価額を決定する
- 売却依頼(媒介契約)をする
- 購入者を決定する
- 再度不動産の名義を変更する
ただし住居には想いが込められていることが多いものです。
資金などの理由から売却を検討している場合、以下の方法もあります。
- リバースモーゲージ
- ハウスリースバック
リバースモーゲージは、不動産を担保にして金融機関から融資を受ける方法です。
ハウスリースバックは、売却した不動産に住み続けられる不動産サービスで、後から売却した不動産を買い戻すことが可能なサービスです。
ハウスリースバックを利用する場合でも、売却手順は変わりませんので紹介します。
相続人を確定させる
不動産を相続する相続人を確定する必要があります。
亡くなった人の名義のままでは、売却が困難だからです。
実際には亡くなった人の名義のまま売却することは可能ですが、買い手がつきにくい現状があります。
そのため、不動産を誰の名義にするのかを決定する必要があります。
名義を変更する
相続人が確定すると、名義を変更することになります。
売却する際の名義になるため、売却資金を受け取れるのも名義人になることが多いでしょう。
事前に相続人を決定するための話し合いを行うことで、親族間などでのトラブルを防ぐことに繋がります。
不動産会社などに依頼して価額を決定する
相続登記を完了させた後、不動産会社などに売却価額を決定してもらいましょう。
不動産会社に依頼すると「費用がかかる」と思われがちですが、売却価額の決定時点では費用は必要ありません。
費用が必要なのは、不動産の売買が成立したときです。
一般的に売却金額の3%の費用が必要になることがあります。
売却依頼(媒介契約)をする
不動産の評価額が決定すると、書いて候補を募集してもらう不動産会社を決定します。
不動産会社に売却依頼をすることを、媒介契約と言います。
媒介契約には、2種類があります。
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
専任媒介契約とは、不動産会社1社に任せる契約です。
一般媒介契約とは、複数の不動産会社に売却活動を任せる契約を言います。
目的に応じて媒介契約の種類を選び、売出し価格の最終決定を行います。
また売却できたときに不動産会社に支払う報酬や売却に向けた活動方針を話し合いましょう。
購入者を決定する
媒介契約により不動産会社が、不動産売却の活動を行います。
購入希望者が現れると、不動産会社の担当者から「購入申込書」を受け取ります。
購入者からの希望条件を検討し、不動産会社を通じて条件等の調整が可能です。
売主と買主の合意ができれば、売買契約を結ぶことになります。
ハウスリースバックを利用する場合、売買契約を結ぶ際に買い戻し条件などを記載しておくようにしましょう。
再度不動産の名義を変更する
売買契約を結べば、再度不動産の名義を変更する必要があります。
売買契約に従い、定めた期日までに引き渡しできるようにしましょう。
売却する不動産に住宅ローンの残債がある場合、金融機関の抵当権を抹消する手続きが必要です。
手続きに時間が必要なことが多いため、事前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
不動産相続には、9つの書類を法務局に提出する必要があります。
- 残高証明書
- 被相続人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書もしくは遺言
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の住民票の除票
- 不動産の登記事項証明書
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
相続登記をしておくことで、不動産を売却することができるようになります。
売却を検討していない場合でも、相続登記をしておくことをおすすめします。
相続登記をしていなければ、本記事で述べたようなデメリットがあるからです。
また不動産を相続した際、資金が必要であればリバースモーゲージやハウスリースバックなどのサービスを利用する手段があります。
あとから複雑な手続きをしなくて良いように、できるだけ早期に相続登記をしておくようにしましょう。
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