Q
新たな大家として、神戸市北区にある築20年の賃貸住宅を相続しました。この住宅は20世帯が住むマンションで、平均家賃は8万円です。リビングには10畳用のエアコンが備えられており、隣接する洋室の空調には問題がありません。ただし、寝室用の洋間にはエアコンが設置されていません。現在、空室が生じたため、寝室にエアコンを導入することを検討しています。費用対効果などどう考えたらいいですか?
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防げない退去を早く知るためには
A
熱中症の発生の約40%が室内で起こるというデータがありますので、寝室にエアコンを設置することは非常に重要です。エアコンの取り付け工事はおおよそ10万円程度で行うことができます。ただし、50万円のリフォームが必要な場合には、判断が難しいこともあるでしょう。こうした場合、どのような基準や考え方で判断すべきかについてお話しいたします。
賃貸経営の目的と考え方が大事です
まず、オーナー様の賃貸経営における目的や考え方によって、最適な答えは異なります。例えば、30年前に同じ仕様の賃貸マンションが2棟あると仮定しましょう。1棟は、壊れた箇所を修理する以外は何も手を加えずに経営されています。もう1棟は、耐用年数ごとに設備を更新し、10数年ごとに外壁や鉄部を塗り替え、各室にエアコンを取り付けるなど、積極的なメンテナンスを行っています。この2棟の現況は、前者は4万円で賃貸され、後者は8万円の平均家賃で経営されています。では、どちらが望ましい経営と言えるでしょうか?
どちらが望ましいかということはいえない
答えは「どちらが望ましいかということは一概に言えません」です。前者の老朽化マンションでも、需要がある場合、満室近い経営が可能かもしれず、費用をかけていない分、収益が確保されているかもしれません。特に、ローンが終了している場合、キャッシュフローも残るでしょう。しかし、これがお勧めされる経営かというと、一般的には老朽化マンションの入居需要は低く、建物自体の寿命も短くなります。将来的に高額な修繕費がかかることが予想され、30年後の経営は困難かもしれません。
もしご自身が建物を築40年で取り壊すことを考えているのであれば、このような経営も一つの選択肢と言えます。しかし、質問者様が築20年のマンションを相続された場合、将来的にどのような経営を望むのか、30年後のマンションの状態について考えてみることが重要です。
投資に見合うかどうかで判断できます
寝室にエアコンを設置することで、家賃を月額3,000円上げられる可能性があれば、10万円の投資は約3年で元が取れる計算です。その後も、数年間にわたり3,000円の増収が期待できるため、良い投資と言えるでしょう。ただし、前提条件としてすぐに入居者が見つかることが必要です。
エアコンを設置し、家賃を据え置きで募集した場合、寝室にエアコンがないという点よりも早く入居者を見つけることができれば、家賃8万円分の増収で80%を回収できます。その後も借主の満足度が高まり、収益の向上が期待できるでしょう。ただし、どちらのケースも「すぐに入居者が見つかる」という前提が大切です。募集広告で「熱中症対策…」などのアピールができると、有利な点と言えます。
また、もう一つの提案として、寝室にエアコンのない世帯に対して、設置を提供するアイディアも考えられます。例えば、5世帯が自分で設置し、残り15世帯が未設置の場合、総額150万円の投資が必要です。一括発注することで工事の手間と時間を節約でき、5~10%程度の割引も期待できるかもしれません。家賃は据え置きで良いと考えます。
「入居者が要求していないのに、なぜお金をかける必要があるのか?」という疑念もあるかもしれませんが、入居者が快適な環境を求めていることは明白です。将来的に入居者が退去するたびにエアコン設置に費用をかけるよりも、現在の入居者が喜び、長期的な収益向上につなげることが賢明な使い道かもしれません。青色申告の場合、経費として計上できる点も考慮に入れるべきです。ただし、これは参考意見としてお考えいただければ幸いです。
“強み”を活かした広告をしてください
では、50万円のリフォームについて考えてみましょう。具体的には和室を洋室に変えたり、壁や襖にオシャレなクロスを取り入れたり、古びたキッチンや洗面台を新しくするようなリフォームを検討する場合の判断基準をお話ししましょう。このような大規模なリフォームはエアコン設置に比べて費用が高く、家賃を大幅に上げることは難しいかもしれません。投資の回収には5年から10年を見込む必要があり、10年が経過すれば投資した価値がゼロに戻る可能性も考えられます。また、リフォームしても即座に入居者が見つかる保証はありません。ただし、リフォームによって訴求力の高い「強み」を持つことができれば、入居者が早く見つかる可能性は高まるでしょう。
判断に迷うことは理解できます。ここで重要なのは、前述のように賃貸経営の目的や考え方です。物件をどのような状態で維持したいかという想いが大切です。費用をかけずに家賃を下げて入居者を確保する方法も、費用をかけて物件のレベルと家賃を維持する方法も、どちらも有効な選択肢です。ただし、20世帯の中で何も手を加えていない部屋と、手をかけた部屋と、高額なリノベーションが施された部屋が混在するのはお勧めできません。賃貸経営の方針が明確でない結果と言えます。入居者の所得や家族構成が異なるため、管理も難しくなります。
このマンションはお父様が持っていたポリシーに基づいて20年間経営されてきたと思いますが、今後の20年または40年について「どうしたいか」を考えることが大切です。10万円のエアコン設置に対する答えは、この視点から簡単に導き出すことができると思います。
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