1. 賃貸物件は「商品」である:基本的な考え方
オーナーが所有する賃貸物件、すなわち貸室は、借主に選ばれる「商品」です。ラーメン屋を例に挙げると、ラーメン屋の店主は毎日お客様のためにラーメンを作ります。それがラーメン屋の「商品づくり」です。そして、ラーメンの味が良くても、それだけではお店は繁盛しません。店の雰囲気、注文のしやすさ、提供スピード、接客対応なども含めて「商品」としての総合力が評価されるのです。
賃貸経営においても同様です。部屋そのものが商品であることはもちろんですが、物件の外観や共用スペース、管理体制、設備の整備、トラブル対応など、総合的な価値が借主に評価されるポイントとなります。
オーナーが賃貸経営で成功するためには、単に部屋を貸すのではなく、借主が満足し、長期的に住み続けたいと思うような「商品」を作り上げることが求められます。それが「収益を最大化するための近道」です。
2. 良い商品の条件とは?
賃貸物件が「商品」であると認識した上で、次に考えるべきは「良い商品の条件」です。一般的に、良い賃貸物件の条件として以下のような要素が挙げられます。
- 築年数が新しい
- 最新の設備が整っている
- 収納スペースが多い
- ゆったりとした共用スペースがある
- 見栄えの良い外観
- 駅やバス停などの交通機関から近い
これらの条件は確かに重要ですが、実は「絶対条件」ではありません。物件のターゲットとなる入居者層や地域の家賃相場によって、求められる条件は大きく異なるのです。
たとえば、家賃相場の上限で運営している物件では、築浅や最新の設備、清潔な共用部分が求められるでしょう。しかし、相場よりも安い家賃で運営している築年数の古い物件では、必ずしも「新しい」「きれい」といった条件は必要ありません。
重要なのは、ターゲットとする入居者層のニーズに合った商品づくりです。賃貸経営において、まず最初に行うべきは「対象となる入居者層の設定」です。想定する入居者層が求める立地、間取り、築年数、設備などを考慮し、それに見合った家賃設定や初期費用、入居審査の条件を決めることが成功の鍵となります。
3. 賃貸物件の商品づくりの3つのポイント:前味・中味・後味
賃貸経営で収益を最大化するためには、物件を単なる貸室として扱うのではなく、魅力的な「商品」として仕上げる必要があります。ここで重要なのが、「前味(まえあじ)」「中味(なかあじ)」「後味(あとあじ)」の3つの要素です。
前味(まえあじ):募集段階での第一印象
「前味」とは、賃貸物件を商品として売り出す段階、つまり募集から内見の時点での印象を指します。この段階で、借主に「ここで暮らしたい」と思わせることが重要です。具体的には、ターゲットとなる入居者層に合わせた賃貸条件の設定、適切なリフォーム、魅力的な広告などが効果を発揮します。
物件の第一印象が良ければ、それだけで競争力が高まり、入居者を早く見つけることができます。また、第一印象が良い物件は、家賃設定が多少高くても借主に選ばれる可能性が高くなります。前味を意識した商品づくりが、賃貸経営の成功を左右する重要なポイントです。
中味(なかあじ):入居期間中のサービスとサポート
「中味」とは、入居期間中の借主に対するサービスやサポートのことを指します。この段階が最も重要で、借主が満足して住み続けるかどうかに直結します。
入居期間中のサービスが良ければ、更新時に家賃の値上げ交渉が可能になることもありますし、何よりも「不要な退去」を防ぐことができ、長期的な安定収益が見込めます。
中味に含まれる要素としては、次のようなものが挙げられます。
- 共用スペースが常に清潔であること
- 設備トラブルに迅速に対応すること
- 共用ルールに違反する入居者に対して厳正な対処を行うこと
このような「暮らしやすい住環境」を提供することが、中味の向上につながります。借主が満足し、長期的に住み続けたいと思う物件であることが、収益を最大化するための鍵です。
後味(あとあじ):退去後のフォローアップ
「後味」とは、借主が退去した後の対応や関係性を指します。賃貸経営においては、退去後のフォローアップはそれほど重要ではないと考えられがちですが、実際には後味も大切です。