【最新賃貸市場動向】防災・省エネ賃貸への関心急増とTSMC進出がもたらす地域相場変動

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店長恋水

こんにちは!KOBE(神戸)売却ナビの恋水です。近年、賃貸市場はこれまでにない変化を遂げています。かつては「家賃」「立地」「間取り」の3拍子が賃貸物件を選ぶ際の最大の決め手でしたが、昨今の傾向はそれだけにとどまりません。気候変動による災害の激甚化や、世界的な半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)の工場進出といった外部要因が、地域の賃貸相場や物件選びの基準を大きく変えつつあります。本記事では、防災・省エネ志向の賃貸住宅人気や、TSMCの進出による熊本県菊陽町・大津町周辺エリアの家賃相場高騰など、最新の賃貸市場ニュースとその背景を詳しく解説します。これから賃貸物件を選ぶ方、あるいは賃貸経営を行うオーナーにとって、新たな物件価値基準が求められる時代が到来していることを感じていただけるでしょう。本日はそちらの開設をしていきます。

1. 災害激甚化が変える賃貸市場の価値観

世界的な気候変動に伴い、日本国内でも大雨や台風、地震などの自然災害が激甚化・頻発化しています。この流れは、入居者の物件選びにも大きな影響を及ぼしています。

1-1. 防災力を重視する賃貸市場

大手不動産関連企業であるリクルートの調査によると、コンセプト住宅の人気ランキングで「防災賃貸住宅」が首位となりました。防災賃貸住宅とは、備蓄倉庫や蓄電池、太陽光発電設備など、災害時に役立つ設備を備えた物件です。従来、若者に人気だった「デザイナーズマンション」や、ファミリー層向けの「子育て世帯向け住宅」を抑え、トップに躍り出たことは、防災意識が高まっていることを鮮明に示しています。

実際、「ハザードマップを確認する」という回答が増加しており、とりわけ東京23区内など都市部でその傾向が顕著です。また家賃が10万円以上の物件を選ぶ際には、約45.5%の入居検討者がハザードマップを確認するなど、安全性に対する意識が家賃水準と比例して高まる傾向が見られます。

1-2. 「防災力×省エネ」住宅の台頭

防災力に加えて、省エネ性能も賃貸市場における新たな価値基準となっています。特に注目されているのが、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)賃貸住宅です。ZEHは、省エネ基準を満たし、太陽光発電や蓄電池を備えることでエネルギー消費を抑え、災害時にもエネルギーを確保しやすい点が特長です。

光熱費削減(63.0%)、結露・カビ抑制(55.5%)、売電収入の還元(54.0%)といった経済的・健康的なメリットに加え、「太陽光発電や蓄電池により災害時に強い」(49.6%)点が注目されています。震災の記憶が色濃く残る東北地方では、63.7%がこの防災性を高く評価するなど、地域特性に応じたニーズの高まりが見られます。

1-3. 世帯構成・年代・性別で異なる防災意識

世帯や年代・性別による意識差も存在します。単身世帯よりファミリー層で防災・省エネへの関心が高く、40.4%が防災賃貸住宅を魅力的と感じています。また、女性(40.8%)は男性(27.2%)よりも防災意識が高く、特に30代女性(44.7%)の防災機能への関心は顕著です。

地域別に見ると、四国では防災賃貸住宅への関心が41.8%と全国平均を上回り、ZEH賃貸への関心も31.3%と高水準です。こうしたデータは、気候変動や自然災害が、物件選びの基準を多様化・高度化させていることを示唆しています。


2. TSMC進出で変動する地域相場:菊陽・大津エリアの例

防災意識の高まりが全国的なトレンドである一方、地域特有の経済要因が賃貸市場を大きく左右するケースもあります。台湾の半導体大手TSMCが熊本県に進出した事例は、賃貸相場を激変させました。

2-1. TSMC進出がもたらした「TSMC相場」

TSMCが熊本への進出を発表した2021年10月以降、同社の工場建設地である菊陽町と隣接する大津町周辺エリアでは、賃料相場が急騰しています。その背景には、工場従業員や関連企業社員、工事関係者などの大量流入があり、単身者向け物件の需要増加が顕著です。

データによれば、大津町と菊陽町ではシングル向けマンション・アパートが20%以上の家賃上昇を記録。また、平均家賃は大津町で59,333円、菊陽町で49,900円と高額化しています。これに対し、熊本市は伸び率が小幅で、平均家賃は41,669円と、TSMC進出エリアとの差が際立っています。

2-2. 新築供給増と空室リスク

TSMCによる地域経済への波及効果は「100年に一度のチャンス」と評されていますが、その一方で新築供給が過熱し、将来的な空室リスクも懸念されています。築古物件の競争力低下、家賃上昇による飲食店撤退、生活インフラの未整備など、急激な成長に伴う課題が浮き彫りになっています。

特に新築物件が増えすぎると、需要が一巡した際に空室率が上昇し、家賃相場が再び下落する可能性があります。投資家や賃貸オーナーは、このような地域経済の変化に柔軟に対応する戦略が求められています。

2-3. 大規模工場計画白紙化で学ぶ教訓

TSMC進出が成功例とされる一方、宮城県大衡村では、台湾のICメーカーPSMCによる8000億円規模の工場計画が突如白紙撤回となったケースが報じられています。地域では工場関係者需要を見込んだ新築アパートが20棟以上建設中であったとされ、計画撤回により需給バランスが崩れる懸念が高まっています。

この事例は、大規模工場の進出が地域経済に大きなチャンスをもたらす一方、確定しない計画や世界経済・半導体市場の動向に左右されるリスクがあることを示しています。投資判断や賃貸経営方針には、長期的視点と経済情勢の見極めが欠かせません。


3. 新たな価値軸への転換:防災性能・環境性能・地域経済の動向

これまで賃貸市場を支えてきた「家賃」「立地」「間取り」の3要素は、今や当たり前の条件となっています。そこに新たな価値軸として加わっているのが、「防災性能」「省エネ性能」、そして「地域経済動向」による賃貸相場の変動です。

3-1. 防災・省エネ性能が生み出す差別化

賃貸物件のオーナーや管理会社は、単なるリノベーションや設備更新にとどまらず、防災機能や省エネ機能を強化することで、物件競争力を高めることができます。災害に強い立地や設備、エコロジーと経済性を兼ね備えたZEH基準の導入など、入居者のニーズに合わせた戦略的改善は、長期的な安定収益につながります。

3-2. 地域特有の相場変動リスクへの対応

大規模企業進出による一時的な需要増は、確かに魅力的な投資機会を提供します。しかし、計画の白紙撤回や、相場過熱後の反動減といったリスクを慎重に見極めなければなりません。中長期的な視点で、需要予測や空室リスク管理を行うことで、過度な投資リスクを回避できます。


4. まとめ:これからの賃貸経営・物件選びに必要な視点

激甚化する自然災害とグローバル企業の地域進出が賃貸市場を大きく揺るがす中、入居者もオーナーも新たな価値基準で物件を見る必要があります。

  • 防災賃貸住宅の需要増:災害への備えを重視する入居者は増えており、ハザードマップ確認や防災設備の有無が物件選びの鍵となっています。
  • 省エネ・ZEH賃貸の人気上昇:光熱費削減や売電収入などの経済的メリットだけでなく、災害時にも電力確保が可能な省エネ住宅が注目されています。
  • 地域経済動向の影響:TSMCなどの大企業進出による局所的な家賃上昇や、その後の反動リスクを見極めることが重要です。

今後は、利便性やブランドだけでなく、実用性・安全性・環境性能を兼ね備えた物件が選ばれる時代となるでしょう。賃貸経営者はこれらの要素を踏まえた物件管理や投資戦略を立て、入居者はより安心・安全・経済的な住まいを求めるようになっています。

賃貸市場は、まさに新たな価値軸が形成される転換点を迎えているのです。

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