こんにちは。KOBE売却&買取ナビ店長の恋水です。不動産業界では、働き手の不足や賃金アップの難しさ、さらには急激な地域経済の変化が同時に進行しています。一方、半導体工場の誘致に沸く地域や、家具家電付き物件など新しいビジネスモデルが注目を集める場面も。今回は、業界の最前線を追い続ける3名の専門家に集まっていただき、不動産業界の「いま」を多角的に語っていただきました。
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はじめに
- A氏:業界20年近いベテラン記者でありながら、事件取材が得意で週刊誌など幅広く執筆している40代前半
- B氏:テクノロジー系ニュースに強いネットメディア記者の30代中盤
- C氏:経済雑誌で不動産・建設を担当する記者の20代前半
以下、A氏・B氏・C氏がざっくばらんに語る対談形式でお届けします。
1. 「人手不足」が変える不動産業界の構造
今年はどこへ取材に行っても「人手不足」の話題ばかりでした。とある地方では管理会社が仲介業務を止めてしまい、まるごと大手チェーンに業務委託するケースが増えているそうです。これって、上半期にも話題になった「賃上げ問題」とも関係しそうですよね。
そうなんです。不動産業界全体の賃上げ率は76.0%と他業種平均よりも低い数字です。特に地方の中小企業にとっては、なかなか売上が上がらず、家賃交渉自体もままならない地域が多い。売上を伸ばせない以上、人件費に回せる余裕が少なく、人を採用できない悪循環が生まれています。
一方、大手チェーンや都市部の企業は一括採用し、地方へ転勤という形で人材を回せますよね。これは中小企業には難しい。結果として、業務が集中するのは採用力のある大手企業に偏りやすく、地方の中小はスタッフが確保できず業務縮小を迫られる。まさに業界構造が大きく変わりかねない状況です。
不動産業界を取材し始めたときは、就職氷河期だったんですよ。こんなに「人手不足」なんて言葉はなかった。まさか人手不足が経営課題の中心になるとは想像もしていませんでした。これからは働き方を柔軟にしたり、外部委託やすき間バイト、ITツールの活用など、さまざまな工夫が一層求められそうですね。
賃貸オーナーにとっても、管理会社の業務効率化に協力する姿勢が重要になると思います。スタッフが足りない中、ITを活用した内見システムやオンライン契約などが当たり前になっていくでしょうし、オーナー側も「ITやリモートは苦手だから」と敬遠せず、変化に合わせる必要がありそうです。
2. 半導体工場がつくる地域格差:千歳市と熊本の現状
今年の大きなトピックは、半導体工場が全国的に注目を集めたことですね。ラピダス(RAPIDUS)やTSMC、PSMCなど、新しい工場計画が続々と浮上しています。私が取材で北海道の千歳市に行ったときは、すでに4000人以上が工場建設に携わっていました。
千歳市役所や不動産会社が連携して、急増する関係者の住宅を確保しようとしているんですよね。ただ、駅前の土地を大規模に所有している地主さんがいて、なかなか売りに出されない。だから投資家も開発業者も、近隣の恵庭や苫小牧方面へ進出しているそうです。
ラピダスは国の後押しでできた会社ですが、実際に製造が軌道に乗るかどうかは未知数な部分もある。似たような話が宮城県大衡村でありましたよね。台湾のPSMCが工場投資を取りやめて、アパートを建てていた投資家が苦境に立たされた。
そういう意味では、地元の地主さんや投資家が慎重になるのは当然かもしれません。一方、熊本のTSMC進出は、まさに「特需」と言える影響が出ています。菊陽町や大津町の単身者向けマンションの家賃が20%以上も上昇したとか。
でも、熊本市内のシングル向けは0.8%上昇にとどまっていて、郊外の工場エリアだけが「TSMC相場」と呼ばれる高水準になっている。第2工場の建設も決まったので、当面は需要が続きそうですが、インフラ整備や生活関連施設などが追いつくのか、大きな課題ですね。
地域経済が発展するのは喜ばしい反面、急激な変化による生活インフラの不足や、築古物件の淘汰など、新たな問題も生まれやすい。持続可能な開発という観点を踏まえて、地元不動産会社や自治体が連携を強化する必要があるでしょう。
3. 物流・引っ越し業界の変化が賃貸市場に与える影響
今年はトラック業界の話も大きな注目を集めました。ドライバーの残業時間が年960時間までに規制され、人手不足がさらに深刻化。宅配の再配達率が約11.1%あるのに、国交省は6%まで下げるように求めているから、現場は大変です。
引っ越し料金は都内の単身近距離でも10万円超えが当たり前になりつつありますよね。繁忙期に至っては、見積もり依頼すら断られることもあるとか。地方でも値上がりが顕著で、業者を選んでいる余裕がないレベルだと聞きます。
その影響もあってか、家具・家電付き賃貸が増えてきています。特に都内では、大手不動産会社が家賃26万~65万円という高級物件を提供していて、外国人やデジタルノマド層からの需要があるそうです。パナソニックの「ノイフル」などの家電定額サービスも普及し始めていて、「持ち運ばない暮らし」を提案する動きが高まっている。
確かに、引っ越し費用が高騰している以上、家具や家電を持たないライフスタイルは若い世代や転勤族にとって魅力的。廃棄やメンテナンスの手間も省けるし、今の消費トレンドに合致する。でも、全部の物件が家具付きになるわけではないから、オーナーには差別化戦略が求められそうです。
4. 不動産詐欺事件の横行と取引安全性への警鐘
今年は不動産詐欺のニュースも衝撃でしたね。まずは住宅ローン詐欺の件。約120人から33億円超を集めたという大規模事件がありました。街頭アンケートで6600人分もの個人情報を得て、年収や家族状況からローンが通りそうな人を巧みに選定していたらしい。
それで不動産投資目的なのに居住用と偽って申請させたんですよね。実際の物件代を差し引いて、余ったお金を購入者に渡すスキーム。一部は数千万円単位の“キャッシュバック”を受け取っていたというから驚きです。
それって金融機関からすると虚偽申告になりますから、一括返済や信用情報の傷を負う恐れが高い。人生設計が大きく狂ってしまう被害者も多いでしょう。あとは高齢者を狙った共有持分詐欺もありましたよね。「アパート1室の55分の6だけ所有する」みたいな、意味不明な商品を高値で売りつけて。
80歳以上の高齢者の名簿を持っていて、認知機能が低い人を狙っていたとか。こうした事件は不動産取引の安全性を揺るがす大問題です。賃貸でも、高齢オーナーが詐欺にあうリスクは他人事じゃありません。管理会社がオーナーに寄り添い、こまめなコミュニケーションを取ることで被害を防げる可能性は高いと思います。
5. 新政権と賃貸住宅業界の関係:石破政権の登場は何をもたらすか
10月に発足した石破政権、賃貸住宅業界と意外に縁が深いらしいですね。石破さんは賃貸住宅対策議員連盟の会長を長年務めてきた実績があるそうで。
過去には災害時に被災者が入居する「みなし仮設住宅」の制度にも関わったと聞きました。家賃滞納やサブリース問題など、多くの課題が山積する不動産業界だから、政治の力で改善できることもあるのではないでしょうか。
能登半島では年初の地震に加え、豪雨被害もあり、住まいの確保が深刻化しています。政治がどれだけスピーディに動いて災害対応できるかも、これからの大きなテーマですね。
6. 2025年が転換点?さらに深刻化する人手不足と地域格差
2025年はさまざまな社会変化が顕在化しそうです。少子高齢化は進むし、人手不足はさらに深刻になりそう。引っ越し料金の上昇も止まりません。半導体工場のある地域は特需が続く一方、人口流出が止まらない地方都市では空き家問題がいっそう深刻化するでしょうね。
ただ「ピンチはチャンス」でもあります。デジタル化や省エネ住宅に対するニーズは高まり、不動産業界全体が再編される可能性があります。大手による吸収統合や、ITスタートアップとの連携など、新たなビジネスモデルが次々と生まれるかもしれません。
アメリカでは2024年の大統領選が話題で、また不動産王だったトランプさんが返り咲くかもしれないという噂も。世界経済の変化が日本の不動産市場に波及するのは早いですから、国内外の動向を注視しつつ、現場をしっかり固めていく必要があるでしょう。
私たちも取材を通して多くの声を拾っていきたいですね。現場の生の情報が今後の戦略に直結していくはず。特に賃貸住宅経営者や不動産会社の皆さんには、「柔軟に変化に対応する姿勢」こそが、これからの時代を生き抜くヒントになると思います。
7. まとめ:変化の波をどう乗り切るか?
- 人手不足:地方中小企業は採用競争で劣勢に立たされ、大手チェーンへ業務集中が進む。
- 半導体工場誘致:一部エリアで家賃が急上昇する一方、インフラ不足や計画撤回リスクも抱える。
- 物流コスト高騰:引っ越し代の上昇が激しく、家具家電付き物件やサブスク家電が注目される。
- 不動産詐欺問題:高齢オーナーを含む脆弱層を狙った詐欺が増加し、取引の安全性確保が急務。
- 政治と不動産:石破政権誕生などをきっかけに、賃貸住宅対策や災害支援をどう改善していくかが焦点。
- 2025年問題:深刻化する人手不足や地域格差、国際情勢の変動など、大転換期を迎える可能性。
不動産業界は今後、デジタル化や働き方の多様化、省エネや家具付き賃貸などの新トレンドをどう取り入れるかがカギになると思います。オーナーや管理会社、投資家は、どんな変化が起きても耐えうる柔軟な経営戦略を打ち出すべきでしょう。
地域によって需要も課題も大きく異なるので、全国画一的な手法は通用しません。人手不足や半導体工場の影響、引っ越し料金の高騰など、それぞれの地域の特色を見極めた取り組みが必要ですね。
僕も引き続き現場を回って、オーナーさんや管理会社、行政の方々の声を拾っていきたいと思います。賃貸市場の変化はスピードが速く、1年後にはまた違う景色が広がっているかもしれません。これからも最新情報を発信し続けますので、よろしくお願いします!
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