不動産の相続にありがちなトラブルとして、「引き受けたい人が誰もいない」というケースがあります。
古い家、空家、田舎の土地…。バブル期に購入したマンションや個人運営のアパートも、今となっては老朽化し、賃貸管理が大変で「相続したくない」と言われてしまいかねません。
そんなトラブルが増えた今、“負動産”という言葉もあるほどです。
大切な資産であるはずの不動産が、「誰も受け取りたがらない負の資産=負動産」になってしまい、相続も押し付け合いになってしまう…そんなエピソードも、近年では珍しい話ではなくなりました。
そこで今回は、この不動産相続ならぬ”負動産相続”について、特に注意しておきたい「管理義務」の話を軸に、解決方法や対策方法をお伝えしていきます。
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だれも引き受けたくない”負動産”、相続放棄はできるのか
まずは、多くの人が気になるであろう「相続放棄」について見ていきましょう。
負動産の相続放棄については、こちらの記事でも解説していますが、改めて触れていきます。
誰も相続を引き受けたくない負動産。相続人がみんなで相続放棄すれば、国に引き取ってもらえるのでしょうか?
これについては、まず民法の定めを見る必要があります。民法の規定によると、相続人が不存在の場合は、その財産は国庫に帰属するとされています(民法第5編第6章(相続人の不存在))。裁判所の解説によると、「相続人が不存在」とは、”相続人全員が相続放棄をして,結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる”とされています。
こうして見ると、相続人みんなで相続放棄をすれば、”負動産”も国に引き取ってもらえそうですよね。
ところが実は、不動産に関しては少し話が違ってきます。
不動産の相続放棄については、昭和41年に法務省より以下の見解が示されています。
不動産の所有権は放棄できない
これを原因とする登記もできない昭和41年8月27日民事甲1953号民事局長回答
そのため法律専門家の解説を見ても、「相続人みんなで相続放棄して、いらない不動産を国に譲渡する」方法は実現できないとされています。
現実的に『不動産の所有権放棄により国に譲渡する』という作戦は取れない
つまり、「誰も相続したくない”負動産”を、相続放棄で手放すことはできない」と言えるでしょう。
法改正により、将来は「土地」は相続放棄できるように
今のところ、不動産を相続放棄で手放し、国に引き取ってもらうことはできません。ですが将来の話をすると、土地に関しては、国に引き取ってもらえるようになる見通しです。
今年(2021年)4月21日、「相続土地国庫帰属法」という新しい法律が国会で可決されました。
この法律がいつから施行されるかは、まだ定まっていませんが、2024年以降になると予定されています。この相続土地国庫帰属法が始まると、相続不動産のうち土地については、国に引き取ってもらうう(国庫に帰属させる)ことも可能になりそうですね。
とはいえ現状においては、まだまだ相続放棄で要らない不動産を手放すことはできないと考えて良いでしょう。
不動産を相続放棄できたとしても、管理義務が残る場合も
さて、なかなか難しい不動産の相続放棄ですが、さらに困った事情もあります。
仮に相続放棄ができたとしても、管理義務が残ってしまう可能性があるからです。
その理由は、民法940条です。
(相続の放棄をした者による管理)第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
つまり、「相続を放棄したから、もう無関係」と決め込むことはできない可能性があります。
“自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続”する義務が発生してしまう場合があるからです。
“負動産”相続の問題は、不動産管理の問題
多くの場合、“負動産”相続のトラブルは、不動産管理の問題だと言っても良いでしょう。ただ持っておくだけで何もしなくて良い、維持費も税金も掛からないのであれば、「とりあえず相続して、あとは放置しておく」という対応も取れますよね。
ですが不動産は、そうはいきません。
もしも賃貸アパートやマンション、借家などで、入居者がまだ1人でもいるのであれば、賃貸管理を行う必要があります。
なにも建物がない土地だけの状態でも、放っておけば草木が生い茂り、近隣との越境トラブルになってしまうでしょう。
空き家であっても、管理せずに放置しておくと「特定空き家」に指定されてしまい、6倍の固定資産税が掛かる恐れがあります。
つまり現実的に考えると、放置しておいて良い不動産は一つもありません。
何らかの管理を続ける必要があります。
こうした不動産管理の手間やコストが掛かってしまうため、「不動産を誰も相続したがらない」という状態が発生してしまうわけですね。
相続放棄しても管理義務・管理責任が残ってしまう
持ってしまうと、何かしら管理をしなければいけない不動産。「管理が負担だから相続したくない…」と思っても、そうはいきません。
・不動産の相続放棄は基本的にできない(昭和41年8月27日民事甲1953号民事局長回答)
・仮に相続放棄できたとしても、管理義務が残ってしまう可能性がある(民法940条)
この2点を考えると、どう頑張っても、相続したくない不動産の管理の悩みからは、逃げることができないように思えます。
現状唯一の解決策は、不動産売却
それでは、「誰も相続したくない不動産」の問題は、どう解決すれば良いのでしょうか。
さまざまな観点から、現状ほぼ唯一と言っても良い現時点での解決方法は「不動産売却」となるでしょう。
「相続人が誰も引き受けたくないような不動産なんて、本当に買い手が見つかるの?」
「売却以外にも、自治体に寄付する方法もあるのでは?」
といった疑問も生じるかと思いますので、一つ一つお答えしていきます。
誰も相続したくない不動産でも、買い手が見つかります
「管理が大変な相続不動産を、売却して手放せた」という人は、実際に大勢います。
「住まいの売却データファイル」の調査によると、管理が大変で不動産を売却した人のうち、実に50.7%が相続不動産。さらに言うと、築年数40年以上が全体の30%、「いつ建てたのかもわからないほど古い」というケースも14.1%もあります。もちろん、これらも全て売却できた人のケースです。
つまり、「いつ建てたのかわからない、築40年以上も経っている老朽化した不動産を相続したけれど、管理が大変」という状況でも、大勢の人が売却に成功しているわけですね。
売却以外にも、自治体に寄付する方法もあるのでは?
一方で、「売却する以外に、自治体に寄付してしまう方法もあるのでは?」と考える人も多いようです。ところが、自治体などへの不動産の寄付は、あまり現実的ではありません。ほとんどの場合、自治体から寄付受けを断られてしまうからです。
たとえば神戸市の場合も、「原則として、行政目的で使用する予定の無い土地(の寄付)は受け入れていない。」と、はっきりと明記されています。
理由としては、
・所有者による管理責任の放棄を促すことになってしまう
・価値の無い土地は行政に寄付すれば良いというモラルハザード
・境界確定や残置物の確認などが、一定の経費等が必要
といった点が挙げられています。
こうした事情は神戸市に限らず、どこの自治体でも同じでしょう。
つまり、「誰も相続したくない”負動産”を、自治体に寄付して手放す」という対策も、現実にはできないと言って良いでしょう。
こうした点を見ても、やはり負動産問題の解決方法は、「売却」が現実的という結論になります。
まとめ:”負動産”相続トラブルは、売却で解決できます
それでは、今回のまとめに入りましょう。
誰も相続したくない”負動産”問題と、そのの解決方法を、改めてまとめていきます。
・相続放棄は実質できない
相続人が全員、相続放棄をしたとしても、国庫に帰属させることはできません。
・仮に相続放棄できたとしても、管理義務が残ってしまう場合がある(民法940条)
ほとんどの場合、”負動産”問題は、不動産管理の問題です。仮に相続放棄できたとしても、管理義務だけが残ってしまい、結局は解決にならない可能性があります。
・自治体への寄付もできない
神戸市をはじめ全国ほとんどの自治体では、不要な不動産の寄付を断っています。「要らない不動産は寄付すればいい」といったモラルハザードになってしまう恐れがあるためです。
・老朽化した物件でも、売却は現実的に可能
不動産管理に悩んで物件を売却した人のうち、約50%が相続物件の売却となっています。また、そのうち約30%は築40年以上、いつ建てたかわからないほど古い物件の売却事例も14%ほど含まれています。
「いつ建てたのかわからない、築40年以上も経っている老朽化した不動産を相続したけれど、管理が大変」という状況でも、大勢の人が売却に成功しています。
様々な法律やデータを見ても、やはり”負動産”相続トラブルの現実的な解決方法は、売却しかないと言っても良いでしょう。
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