中国不動産バブル崩壊か?
中国の大手不動産企業、碧桂園(カントリー・ガーデン)が資金調達に困難を抱え、破綻の状態に近いとされています。中国全体の経済が苦しい状況下で、特に不動産市場では新築住宅の販売が低迷し、回復の兆しが見られません。中国のメディアでは、日本のバブル崩壊を例に挙げ、長期的な不景気に陥る可能性を示唆し、「中国不動産バブル崩壊か︖」という報道も見受けられます。日中の経済的な結びつきを考慮すると、日本にも影響が及ぶ恐れがあります。
しかしながら、現時点では中国政府が未完成の物件の引き渡しを優先し、デベロッパーの破綻を防ぐための支援策を講じており、不動産市場が急速に崩壊する可能性は低いと見られています。さらに、中国の銀行が不動産業者に対して行っている貸し出しの割合が全体的にそこまで高くないため、金融システムへの大きな影響は限定的であるとされています。
日本が過去に経験したような金融機関による貸し渋りや貸し剥がしによるダメージは、現時点では予測されていません。この点に関しては、中国が過去の事例を参考にし、対処している可能性も考えられます。
市場は不透明な状況…
韓国の不動産市場も急速に冷え込んでいますが、中国ほど大々的に報じられていません。韓国銀行(日本の日銀に相当)が、2020年に0.5%だった政策金利を、2023年までに3.5%まで引き上げたことが、住宅ローンの金利負担を急増させ、不動産投資に大きな減速をもたらしました。この結果、マンション価格が下落しています。
また、韓国独自の「チョンセ」と呼ばれるシステムを活用したギャップ投資(物件の購入に際し、住宅価格とチョンセ価格(保証金)の差額だけで購入する方法)も立ち行かなくなってきました。政府は税制緩和などの対策を講じていますが、不動産価格の下落が今後も続くとの予測が多く、市場は不透明な状況です。
ただし、韓国と日本との経済的な結びつきは、半導体や観光など一部の分野に限られています。そのため、中国や米国の不動産不況と比較して、韓国の状況が我が国に与える影響は少ないと見られています。
事故物件に住みたくない人は7割以上
アメリカの商業用不動産市場で深刻な問題が発生しています。2022年4月から2023年8月の1年4カ月間で、アメリカの商業用不動産価格が16.5%も下落しました。この下落幅はリーマンショック以来のものであり、これからも下落が続く可能性が予測されています。特にオフィス物件では31%もの価格下落が顕著で、この要因にはコロナ禍で広まったリモートワークが大きく関与しています。
現在、アメリカでは労働者の10%以上が完全リモートで働き、さらに3人に1人が自宅勤務とオフィス通勤を併用しています。このリモートワークの普及により、企業はオフィス面積を減らし続けています。同時に、ネット通販の需要が増加し、倉庫物件の価格は8%下落にとどまっています。
この不動産市況の影響は不動産市場だけでなく金融機関にも及んでおり、特に地方銀行(中堅・中小銀行)では不動産融資の割合が20%以上に達しています。もしも不動産が不良債権化すれば、銀行経営への影響を避けることは難しいでしょう。
これらの海外不動産市場の動向は日本にどのような影響を及ぼすでしょうか?まず、安全な投資先を求めて日本の不動産市場に資金が流れ込む可能性があります。また、今現在、1ドルが150円台まで円安が進んでおり、世界的に見て日本の不動産は割安とされています。そのため、アメリカや中国の不動産市場から日本市場に資金が流入すれば、不動産価格が更なる上昇を示す可能性があります。
ただし、もしアメリカの不動産不況が金融市場に深刻な影響を与える状況となれば、世界的な不況の可能性も考えられます。もしリーマンショックのような事態が再発すれば、日本の景気悪化や法人契約の解除、家賃滞納などの影響が出るかもしれません。また、金融機関が融資を厳格化すれば不動産価格が急激に下落する可能性もありますが、それにより物件を手に入れるチャンスがある投資家もいます。
海外の不動産市況は遠く離れた出来事のように感じられるかもしれませんが、それが日本の経済や不動産市場、賃貸経営に与える影響は無視できません。これからもこれらの動向を注視し、注意深く見ていく必要があります。