Q
本年5月号で「満室後に本当の空室対策が始まる」と回答されました。退去対策として、もう少し具体的な方法についてお話しいただけないでしょうか︖
\不動産の管理や売却などのお悩み、ご相談下さい!/
防げない退去を早く知るためには
A
前回は、防げない退去と防げる退去があると言いましたね。まず、転勤や自宅購入などの「防げない退去」は、なるべく早く知ることが大事です。早い分
だけ、次の募集条件とか、リフォーム計画とかの、検討や準備ができるからです。解約通知は「1 ヵ月前」が多いので、借主は早く退去が決まっても、貸主への通知をギリギリにする方もいます。でも貸主側は、退去が決まったらすぐに知りたいわけです。大学生の場合は 3 月末の退去が多く、それを 1 ヵ月前の 2 月末に知るのでは遅いので、年末か年初めに退去予定を確認する、ということはあります。しかし、入居と退去時期がバラバラの一般借主には難しいので、日頃のコミュニケーションを良くすることで、事前に聞ける可能性を高めることができます。では、そのコミュニケーションをどう取るか︖
合意更新の地域は 2 年ごとに更新契約というコミュニケーションの機会があります。更新の確認通知を1ヵ月前よりもっと早くすることで、退去の予定が決まっているなら知ることができます。一方で自動更新の地域は、意図しなければコミュニケーションがゼロになることもあります。その場合は、貸主側から定期的な接触を働きかける必要があります。例えば年に 1 回は、「お住まいになって〇年になります。何かございますか︖」と問いかけるのも一つの方法です。または、早く退去日を通知した借主に、わずかでも何らかのサービスが付与される、という契約条件も効果があるかもしれません。いずれにしても「退去予定を早く知ることが空室期間を短くする」と意識することが重要です。
防げるかもしれない退去を防ぐために
借主の満足度を高めて永く住んでもらう、というのが基本的な考えですが、商売としては当然ですよね。しかし賃貸経営は収益を上げるのが目的ですから、サービス提供によって収益を損ねては本末転倒です。次の中から現実的に採用できる方法を検討してみてください。
共用部分をきれいに
誰でも住環境はきれいな方が好ましいです。しかし、築年数が古く安い物件なら共用部の汚れに不満を持つ人は少ないでしょう。反対に、平均以上のグレードや築年数が浅い物件に暮らしているなら、共用部に常にゴミが目立つという状態は不満なはずです。負担している家賃に見合った価値がない、と感じます。この不満を育てないために、共用部の清掃を定期的に行うのが良いと思いますが、その頻度は、物件のグレードや家賃によって適正回数を判断します。また現場に定期的に行くことで、入居者との接触機会が増えるのと、次のテーマである「トラブルの芽」を見つける機会が増えます。
トラブルや不満の芽を摘む
ルールを守らない入居者や、建物設備や管理への不満が高じて退去につながるとしたら、その芽は小さいうちに摘み取るべきです。たとえばゴミ出しのルールや、通路に私物を置かないという取り決めを守らない入居者がいたとき、大したことではないと簡単な全体注意だけで放っておくと、ルールを遵守する入居者には不満が募ります。共同住宅のルールは、守れない世帯に厳格に伝えて守ってもらう必要があります。そして貸主側が行動していることを、他の入居者に伝わるようにすべきです。また、共用部清掃や定期点検や、何かの用事で現地に行ったときは、トラブルの芽を見つける機会でもあるので、そのような意識で全体を見回るとよいと思います。
永く住んだ人が得をする
昭和の終わり頃は家賃が値上がり続けた時代で、永く住んでいる人の方が確実に家賃は安くなっていました。更新時の値上げでは、実勢の家賃に追い付かなかったのです。永く住むほど得をする時代です。しかし、家賃相場が下がっている時代は逆に、永く住んでいる方が新しい借主より家賃が高い、という状況が生まれます。これでは「住まいを変えた方が得」という動機が生まれてしまいます。この借主を退去で失うのは本当に残念です。「永く住むほど得をする」という方法はないでしょうか︖
本年5月号でも回答しましたが、2年ごとの更新のタイミングで、借主が希望する設備(エアコンやシャワートイレなど)や家電をプレゼントするとか、生活に支障のない範囲でプチリフォームして差し上げる、というのは一つの方法だと思います。貸主の出費にはなりますが、これで物件力が増すことになるので効率のよい投資です。暮らしている人が選ぶ設備ですから、一般の借主ニーズにも沿っているでしょう。次の募集時のセールスポイントになるはずです。家賃を下げるよりもずっと良いと思います。自動更新の地域でも、この2年ごとのイベントを行うことは可能ですね。
・防げない退去をなるべく早く知る
・防げる退去を防ぐ手立てをする
小さなことかもしれませんが、この2つも、今後の経営方針に加えてはいかがでしょうか。
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