2024年上半期の賃貸住宅業界を振り返る:倒産急増から給与の賃上げ、投資トラブルまで

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店長恋水

こんにちは。KOBE売却&買取ナビ店長の恋水です。今回は、大災害による影響から賃貸業界の変動、給与の課題と価格転嫁の難しさ、そして投資トラブルまで、賃貸住宅業界の2024年上半期を深堀りしていきます。

2024年の賃貸住宅業界は、元日に発生した能登半島地震から始まり、その後も多くのトピックスが飛び交いました。本記事では、週刊誌やビジネス誌の執筆を手掛けるライターA氏、不動産業界向け新聞のB記者、不動産ネットメディアの編集者C氏の3名が、2024年の上半期に起こった賃貸住宅業界の重要なトピックスについて語り合った内容をもとに、その詳細を振り返っていきます。

1. 街の不動産屋の倒産急増とその背景

2024年の幕開けは、能登半島地震という大災害から始まりました。多くの家屋が被害を受け、復旧作業が難航している中で、新たな仮設住宅の形態としてムービングハウスやキャンピングカーが注目されました。しかし、能登半島は持ち家率が高く、賃貸住宅のストックが少ないため、被災者が賃貸住宅を利用して生活を再建することが難しい状況にあります。さらに、高齢化が進んでいる地域であり、復興の担い手不足も深刻です。

その一方で、2023年には「街の不動産屋」の倒産が急増しました。東京商工リサーチの調査によると、不動産仲介業の倒産件数は120件に達し、前年の69件から7割増加しました。この急増の背景には、引っ越し需要の減少が影響しているとされています。2023年3月の首都圏の賃貸契約件数は、コロナ前の水準の約8割にとどまり、仲介売上の減少が倒産増に繋がったと考えられています。

在宅勤務の普及や、大企業による異動制度の見直しも、法人向け賃貸需要の伸び悩みに影響しています。また、引っ越し費用の高騰や家賃の上昇も、個人の住み替えニーズを抑える要因となっています。これにより、転居が減少し、借主の入居期間が長くなる一方で、新たな賃貸需要が生まれにくい状況が続いています。賃貸経営にとって、これは“プラマイゼロ”か、あるいはマイナスとなる可能性があると考えられます。

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2. 賃上げの課題と価格転嫁の難しさ

2024年度の企業の賃上げについての調査が発表されました。企業の85.6%が賃上げを予定している一方で、不動産業界においては賃上げ予定が76.0%と、他の業界よりもやや低めです。特に、大企業では賃上げ予定が100%なのに対し、中小企業では73.0%と差があります。賃上げには「価格転嫁」が鍵となりますが、不動産業界ではそれが難しく、賃上げの原資確保が課題となっています。

例えば、大阪で1000室以上の賃貸住宅を所有している法人オーナーが、毎月の管理料を1000円値上げすると通知したところ、入居者からの猛反発を受けました。これは、掃除のパート従業員やスタッフの給与を上げる必要があるための対応でしたが、結果としては厳しい交渉を余儀なくされています。2023年には「人件費高騰」での倒産が増えたこともあり、無理な賃上げは経営を圧迫するリスクがあるとされています。

賃上げに関しては、ベースアップよりも賞与で対応する企業が多く見られます。しかし、全国的に人手不足が深刻化している中で、伊藤忠商事のように福利厚生を充実させるために独身寮を復活させる企業も現れています。かつては「持たざる経営」が主流でしたが、ショールームや防災施設を併設するなど、社員の生活環境を改善し、企業の社会的責任を果たす方向に変化してきています。

3. 賃貸業界の人手不足と家賃の上昇

不動産業界では、人手不足が深刻化しており、大手ハウスメーカーでは新入社員の多くが法人営業部門を希望するという状況です。理由としては、土日休みが確保できる点が挙げられます。一方で、賃貸住宅営業は最もボーナスが多い部署であるにもかかわらず、最近の若者は金銭だけでは動かないといった声も聞かれます。

三井不動産レジデンシャルでは、社員の生活に配慮して一部店舗で日曜休みを導入しているケースもあり、住宅関連企業における「土日がかき入れ時」という常識が薄れつつあります。しかし、大手企業でさえ採用に苦戦している中で、中小企業ではさらに厳しい状況が続いています。経営者としては社員の給与をアップさせたいものの、光熱費やその他の経費が増えている状況では慎重な対応が求められます。

家賃の上昇については、2023年の消費者物価指数で賃貸住宅の家賃が前年比0.1%上昇し、25年ぶりにプラスに転じました。しかし、実際には新築物件の家賃が全体の上昇を牽引しているに過ぎないという現実があります。例えば、東海地方の管理会社では家賃アップのための特別チームを編成し、入居者との交渉に取り組んでいますが、結果がどうなるかはまだ不明です。

物価高の影響で実質賃金が下がっている以上、家賃の値上げは容易ではありません。賃貸経営において家賃の上昇は重要ですが、全面的な上昇が期待できるのはまだ先の話かもしれません。

4. 「みんなで大家さん」に再び行政処分が下される

2024年上半期の賃貸業界で特筆すべき出来事の一つに、賃貸物件を小口化して投資家を募る「みんなで大家さん」に対する行政処分があります。今回は、大阪府と東京都から不動産特定共同事業法違反で一部業務停止の処分が下されました。これで3度目の処分となり、不安を抱いた約400名の投資家が解約を希望し、その総額は48億円に上りました。

「みんなで大家さん」グループが手掛ける成田プロジェクトは、成田空港の北西に位置する約45.5万平方メートルの開発用地を対象に、投資家から資金を募り、賃貸物件として運用することで利益を分配するという仕組みです。このプロジェクトに対して、行政からの処分では、一部計画の変更に対する投資家への説明が不足していると指摘されました。こういったトラブルが続くと、賃貸物件への投資全体に悪影響が出るかもしれないので、注意深く見守りたいですね。

まとめ

2024年上半期の賃貸住宅業界は、大災害から始まり、倒産急増、賃上げの課題、人手不足、家賃の上昇、そして投資トラブルと、多くの出来事が続きました。下半期も、国内外の経済動向や政策の変化が賃貸業界に大きな影響を与える可能性があるため、引き続き注目が必要です。

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