不動産を相続する際、相続人は相続登記をすることがあります。相続登記は義務化されていませんでした。
相続登記しなくても罰則がないため、相続後に放置された不動産が多く存在します。そのため所有者不明の土地が増えている実態があります。
所有者不明の土地を放置すると公益事業を行うなどの利用ができず、国レベルで大きな問題となっていました。
2021年2月10日に法制審議会民法・不動産登記法部会第26回会議にて「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要網案」が決定されました。
不動産登記は義務化されることになったため、わかりやすく説明します。
【不動産相続】相続登記義務化のポイント
相続登記に関する義務化は、3つのポイントがあります。
- 相続登記の義務化
- 住所変更登記の義務化
- 法務局への所有者情報提供の義務化
それぞれ説明します。
相続登記の義務化
相続登記は2024年4月1日から義務化されます。これまでは義務ではなかったため、相続登記をしなくても罰則は存在しませんでした。
しかし2024年4月1日以降に相続した不動産の所有者は「3年以内」に相続登記しなければならなくなりました。
相続登記とは?
相続登記とは、被相続人から相続した不動産の名義を「被相続人から相続人に変更する」名義変更登記手続きのことです。
以下の記事でも解説しているため、参考にしてください。
相続登記をしなかった場合の罰則は?
相続登記をしなかった場合、正当な理由がなければ「10万円以下の過料対象」となります。正当な理由とは以下のような場合を指すといわれています。
- 相続人が多数で、戸籍謄本等の必要資料を集めるのに時間が必要な場合
- 遺言や遺産の範囲等が争われている場合
- 相続人の体調不良により許可される場合
ただし「正当な理由」は、今後の通達等で明確化される予定です。より具体的なケースは通達により把握するようにしてください。
法改正以前の未登記物件も対象になる
相続登記の義務化は「法改正以前の未登記物件」にも当てはまります。つまり、これまで相続登記していなかった不動産についても義務化されます。
原則として3年以内に相続登記をおこなう必要があるため、未登記の場合は一刻も早く相続登記する必要があります。
相続登記せずに放置した場合、10万円以下の過料対象となります。
住所変更登記の義務化
相続登記の義務化にともない、住所変更登記も義務化されます。2026年4月28日までに義務化されます。
不動産の所有者変更は相続だけに限りません。不動産の売買や贈与なども当てはまり、2年以内に変更登記を申請しなければなりません。
住所変更登記しなかった場合の罰則とは?
住所変更登記も正当な理由なく登記申請しなければ罰則があります。罰則とは5万円以下の過料です。
正当な理由の具体例は、相続登記の義務化と同様に今後の通達で明確にされる予定です。
法改正以前の住所等の変更未登記物件も対象
相続登記と同様に、法改正以前から住所変更登記をしていない不動産にも適用されます。
住所変更登記していない不動産がある場合、施行日から2年以内に住所等の変更登記をする必要があります。
施行日が2026年4月28日ですので、2028年4月28日までに住所変更登記をするようにしましょう。
住所変更登記をせずに放置した場合、5万円以下の過料対象になります。
法務局への所有者情報提供の義務化
法改正がおこなわれてから、新たに不動産の所有権を取得した場合、法務局への所有者情報提供が義務化されます。
提供する必要がある情報は以下のとおりです。
- 生年月日
- 住所
- 氏名
- その他
個人の生年月日は登記簿に記録されませんが、法務局内部にて住民基本台帳ネットワークシステムに照会されます。
所有者が法人である場合には、商業・法人登記のシステム上の会社法人等番号が登記簿に記録されます。
相続登記が義務化された理由
相続登記が義務化された理由を紹介します。
- 所有者不明の土地が増える
- 有効活用できない土地が増える
それぞれ解説します。
所有者不明の土地が増える
相続登記が義務化された理由には「所有者不明の土地が増える」ことが挙げられます。所有者不明土地とは以下のものを指します。
不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地
引用:国土交通省|人口減少時代における土地対策の推進〜所有者不明土地等対策〜
土地や不動産の所有者は「不動産登記簿」で確認することができます。しかし様々な理由により情報が反映されないことが増えています。
登記簿に情報が反映されないケース
不動産登記簿に情報が反映されないケースには、以下のものがあります。
- 相続登記されていない
- 法定相続人のあいだで話し合いされていない
- 遺産分割協議がおこなわれていない
一世代だけの相続であれば所有者を割り出すことも可能です。しかし中には世代をこえて何世代も前から相続登記されていない不動産も存在します。
法定相続人の人数が多くなりすぎて、所有者が不明になっているケースが少なくありません。このようなケースに対応すべく、相続登記の義務化が実施されます。
有効活用できない土地が増える
所有者不明の土地が増えることで、有効活用できない土地が増加します。
日本全体で所有者不明土地の面積は、九州の土地面積を上回ると言われています。所有者が不明であるゆえに、公共用地としても活用できない自体が発生しています。
例えば災害対策の工事が必要な土地に所有者不明物件がある場合、国や自治体が所有者と交渉することができません。
民間同士でも同様で、空き家になっている不動産を売却して地域復興を検討することもあります。しかし土地の所有者が不明であれば、勝手に空き家を売却することは不可能です。
有効活用できない土地が多くなりすぎているため、法務局への所有者情報提供の義務を課すようになります。
相続登記義務化に対する対策とは?
相続登記の義務化は2024年4月1日から実施されます。そのため、まだ未登記の不動産がある場合には、直ちに相続登記しなければいけません。
ただし以下のようなケースがある場合、なかなか相続登記できないこともあります。
- 遺産分割がまとまらない場合
- 不動産の遺贈を受けた場合
簡単に説明します。
遺産分割がまとまらない場合
遺産分割協議による相続人の合意が成り立たないケースです。
相続登記の義務化にともない、遺産分割を急いでも話がまとまらないこともあります。法定相続分で登記手続きするには、手間やコストが必要です。
この場合、相続人申告登記(仮称)を申請することで、相続登記をする義務を免れられる可能性があります。
不動産の遺贈を受けた場合
相続人に対して一部の相続財産を遺贈する内容の遺言があると、法定相続人全員の同意が必要になります。
不動産の遺贈を受ける者以外の協力がなければ、遺贈による名義変更手続きができないからです。相続人のなかに協力しない者がいる場合、名義変更義務を履行できない可能性があります。
遺贈による名義変更は、不動産の遺贈を受ける者が単独で申請できるようになります。
相続登記義務化まとめ
相続登記は2024年4月1日から義務化されます。義務化される理由には、所有者不明土地問題があります。
これまで相続登記をせずに放置していた場合でも、過去に遡って登記する必要があります。登記義務を知った日から3年以内に登記しなければならず、未登記のままでは10万円以下の過料対象になります。
ただちに相続登記する必要があり、焦る気持ちもあるかもしれません。相続登記の手続きは、個人でおこなうには難しいことがあるため、専門家への相談をおすすめします。
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