【弁護士による賃貸法律相談室】保証会社の活用と家賃滞納による契約解除の関係

賃借人が家賃を滞納した場合

店長の恋水です。最近私が担当している神戸市中央区のメンションでも増えてきましたが、新規賃貸借契約で連帯保証人を立てずに、代わりに家賃保証会社(以下、保証会社)を利用する条件の契約が増加しています。保証会社を利用すると、もし賃借人が家賃を滞納した場合でも、保証会社が滞納分を賃貸人に支払い、その後、保証会社が賃借人から回収を行う仕組みが一般的です。賃貸人にとって、個人保証人を設定するよりも家賃の回収リスクが低くなる利点があります。

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一方で、賃借人が滞納しても、保証会社が迅速に支払ってくれるため、賃貸人から見ると滞納額が積み上がりません。このような状況で、賃貸人が賃貸借契約を解除するためには、賃料の滞納分が通常3カ月以上に及んでいる必要があります。しかし、賃貸人としては、賃料の滞納を理由に契約解除ができるのか、保証会社によって滞納額が形式的にはゼロである場合でも解除できるか、といった疑問が浮上しています。

この問題が争点となったのが、大阪高等裁判所平成25年11月22日の判決での事例です。以下は、その判決の要点です。

1、平成23年12月15日に賃貸借契約を締結。賃料は月額7万1,000円、共益費は5,000円、水道代は2,000円とされる。
2、賃借人は契約からわずか2カ月後の平成24年2月から賃料の滞納を始め、平成24年4月から8月までの賃料が未払いとなる。
3、平成24年9月、賃貸人は訴状を提出して賃貸借契約の解除を通知し、建物明渡し訴訟を提訴する。
4、賃借人はその後も賃料の滞納を続け、平成25年3月まで1年分の賃料が未払いとなる。
5、賃借人の滞納賃料は都度、保証会社により賃貸人に支払われている。

訴訟の中で、賃借人側は次のように主張しました。「滞納した賃料は保証会社が代わりに立て替えて支払っており、その結果、賃料は滞納していない」という反論を行い、賃貸借契約の解除と明渡しについて争いました。

この事例において、裁判所は賃貸人からの賃料滞納を理由とした賃貸借契約の解除を認めました。裁判所が解除を認めた理由について、以下のように述べています。

 

「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は、保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し、賃借人が賃料の支払いを怠った場合に、保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり、これにより、賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし、賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。」

「しかし、賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払いは代位弁済であって、賃借人による賃料の支払いではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払いという事実に影響を及ぼすものではなく、したがってこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生を妨げるものではないことは明らかである。」

裁判所の立場を簡潔にまとめると、保証会社による賃料の代位弁済は、賃借人が賃料を支払わない限り、賃借人の債務不履行とみなすべきであるという考え方です。最高裁判例はまだ存在しないものの、同様の判断を示した裁判例がいくつかあり、この判断が一般的に受け入れられています。賃貸借契約において保証会社を利用する場合、賃料滞納に対する解除権などを規定した契約条項を設定することも一般的です。したがって、賃料滞納が繰り返し発生した場合、賃貸人は保証会社と協力して対処する傾向があります。

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