こんにちは。神戸市中央区の不動産屋KOBE売却&買取ナビ店長の恋水です。賃貸経営において、原状回復工事は単に「入居時の状態に戻す」だけでなく、賃料を安定させ、入居率を高めるための戦略的な手段と捉えることが重要です。平成10年頃、原状回復工事は基本的に「貸室内を入居時の状態に戻す」ことが中心であり、工事費用も多くが借主負担となっていました。しかし同年、建設省が発表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」により、通常の使用に伴う損耗は貸主が負担する一方、故意・過失による損耗は借主が負担するとの認識が広まり、現在のような工事負担が明確化されています。
今日は、賃貸経営者が原状回復工事を単なるコストとして捉えるのではなく、入居率を向上させるための投資と考えられるようになりました。適切な原状回復工事によって物件の魅力が向上し、空室期間が短縮されることも少なくありません。そこで本記事では、賃貸経営における原状回復工事の意義、効果を高めるための工事方法、失敗例を元にした成功のポイントを解説します。
原状回復工事の重要性と賃貸経営への効果
原状回復工事は単なるメンテナンスや修繕以上に、賃貸経営における健全な収益維持のための不可欠な要素です。原状回復工事を適切に行うことで、賃貸物件の価値が向上し、より高い賃料での貸出が可能になるほか、入居率の向上にも大きく寄与します。賃貸物件のオーナーや管理会社が、入居者にとって魅力的な環境を整えることで、安定した収益を確保することができるのです。
原状回復工事における失敗例とその学び
賃貸管理スタッフが集まり、お互いの経験を共有する会合で話題となることが多いのが「原状回復工事の失敗例」です。ここでは代表的な失敗例を紹介し、その教訓をもとにした効果的な原状回復工事のポイントを解説します。
ケース①:天井クロスの張り替えを怠った事例
ある賃貸物件で、入居者が5年住んだ後に退去しました。通常、壁のクロスの張り替えは行いますが、このケースでは天井のクロスの張り替えについて迷いが生じました。天井も経年変化していたため、スタッフは張り替えを提案したものの、オーナーが「目立たないから張り替えなくて良い」と提案を却下。その結果、工事が完了すると新しい壁クロスと古い天井クロスの差が明確になり、内見者から「天井が気になった」との声が上がってしまいました。このため、この部屋が契約に至るまで数ヶ月の空室期間が発生しました。
学びポイント
- 経年劣化は壁だけでなく天井にも現れるため、統一感を考慮したクロスの張り替えが重要です。特に賃貸物件では、数万円の経費削減よりも、早期の契約成立による収益確保を優先する姿勢が求められます。
- オーナーの意見に従うだけでなく、プロとしての提案を積極的に行い、物件価値の向上に貢献することが必要です。
ケース②:細部の劣化を見逃した事例
長年にわたり管理している物件では、クロスや畳の張り替えは定期的に行われますが、コンセントやスイッチカバー、木部の小傷など、細かな箇所の劣化が見過ごされることが多くあります。特に築10年以上の物件では、壁や畳が新しくなるほど、こうした細部の劣化が際立ってしまうことが少なくありません。忙しい繁忙期には問題とならない場合でも、閑散期の内見者は細かな箇所もチェックしやすく、こうした部分が原因で契約に至らなかったこともあります。
学びポイント
- 賃貸物件の細部の劣化にも気を配り、コンセントカバーやスイッチ、木部の傷の修繕も行うことが大切です。小さな改善が大きな印象を左右することがあり、賃貸物件の長期的な価値を保つための工夫が求められます。
ケース③:エアコンの取り替えを怠った事例
入居から15年が経過したエアコンの取り替えについて検討した際、「まだ壊れていないから」との理由でオーナーが交換を見送りました。しかし、新たな入居者が決まり、夏が訪れたころにエアコンが故障。エアコン交換の際、サイズが合わず、クロスの端が欠けることとなり、再度クロスの張り替えが必要に。入居中の工事は空室時よりもコストが高くなり、さらに時間調整の負担も発生するため、結果的にオーナーには割高な費用が発生しました。
学びポイント
- 長期間使用している家電や設備については、故障前に交換を検討することが重要です。入居中の修繕よりも空室時の交換の方がコストが抑えられることが多く、長期的な視点で賃貸物件のメンテナンスを行うことが求められます。
効果的な原状回復工事のポイントとまとめ
上記の失敗例から見えてくるのは、賃貸経営で収益を高めるためには、短期的な経費削減だけでなく、長期的な視点での投資が必要だということです。賃貸物件の価値を高め、空室期間を短縮するための原状回復工事における重要なポイントは以下の通りです。
- 壁や床以外の細部も徹底的にチェックすること
クロスや畳だけでなく、スイッチカバーや木部の傷、エアコンのような家電設備まで、経年劣化した細部にも気を配り、物件全体の価値を高める努力を行います。 - 経費削減を短期的に考えず、長期視点で判断すること
コストを抑えることだけにこだわらず、空室期間が発生しないよう長期的な収益向上を考えた投資判断を行うことが重要です。 - 原状回復とリフォーム工事の組み合わせでコスト削減を実現すること
原状回復工事とリフォームを組み合わせることで、余計な二重工事を防ぎ、より効率的なメンテナンスを実現します。
賃貸物件を「早く高く貸し出すための手段」として原状回復工事を活用し、安定した賃貸経営を目指しましょう。成功する原状回復工事の実施は、空室リスクを軽減し、長期にわたって収益を上げるための賢明な投資となるはずです。