店長の恋水です。神戸市のお客様からも何件か相談を受けたことがありますが、不動産の税金や相続してから申告漏れをしてしまうとどんなペナルティがあるかなど、相続税の税務調査により相続財産を指摘される大家さんが増えていますね。税務調査は新型コロナの影響により減少していましたが、沈静化されるにつれて増加していると言えます。今回は相続税の税務調査で最も指摘が多い事項と、大家さんが気をつけるポイントを解説します。
増加する相続税調査
国税庁が発表している「相続税の調査等の状況」によると、相続税の実地調査は以下のように減少していました。
年度 | 件数 |
令和元事務年度(2019年7月〜2020年6月) | 10,635件 |
令和2事務年度(2020年7月〜2021年6月) | 5,106件 |
令和3事務年度(2021年7月〜2022年6月) | 6,317件 |
一方で実地調査による非違割合(申告漏れ等の誤りがあったものの割合)は、いずれも85%超です。10件中8件は税務調査による指摘を受けている数字で、この割合は他の税目と比べるとかなり高い割合といえます。
税務調査の申告漏れによるペナルティ
相続税の税務調査で申告漏れ等が発生すると、通常の相続税以外に以下のものがペナルティとして与えられます。
- 加算税10%または15%
- 重加算税35%または40%(悪質な場合)
相続税の申告書が提出されると税務署は内容を検討し、確認したい事項があれば税務調査という流れになります。事前連絡なしに職員が自宅に来ることはなく、事前に電話連絡があります。税理士に「書面添付制度」を依頼すれば、税務調査の割合を減らすことも可能です。書類添付制度とは、税理士が相続税の申告書の内容や計算方法を調査したことを示した書面を添付することです。申告書に「お墨付き」を与えることができるため、信頼度が高まります。
税務調査の時期や調査官について
税務調査の時期は税務署の人事異動が終了する7月から12月にかけて行われることが多いです。
1月から3月は確定申告時期ということもあり調査は少なく、4月以降に行われやすいといえます。税務調査に要する時間は財産規模にもよりますが1日で終わるケースがほとんどです。
税務調査当日は、調査官2名が担当して10時から開始されます。被相続人が生前にどのような生活をされていたのか、通院や入院歴、趣味や生活費の管理方法などをヒアリングすることが多いでしょう。調査官はヒアリングによって、生前の被相続人について多くを把握しようとしています。
さらに午後になると以下のものが調査されます。
- 申告書に記載された財産
- 債務に関する原始資料
税務調査に準備しておくのは以下のものです。
- 相続税の申告書
- 計算に使用した原始資料
- 被相続人の預貯金通帳の履歴
- 相続人の預貯金通帳
申告漏れが指摘されやすいこと
税務調査で指摘されやすいのは、現金や預貯金についてです。被相続人が家族名義で貯金していたり、タンス預金などをしていた場合でも、全てが調査されます。相続人名義の預貯金であっても、被相続人が拠出している場合は相続財産になります。
例えば専業主婦の奥さんがいる場合、多額の預金を保有していることがあります。奥さんが過去に貯蓄した財産ではなく、被相続人から受け取ったものであれば原則的に相続財産として調査されます。税務署は預金履歴を事前に調査し、預金の流れを把握しているため隠すことはできません。
調査される申告について
税務調査の選定理由は非公表ですが、以下の場合は調査対象になる可能性が高まります。
- 被相続人の生前の収入から考えられる財産が少ない場合
- 極端に預金が少ない場合
税務署では被相続人の収入は所得税の確定申告により把握できますし、一定の富裕層であれば財産債務調書の提出義務があるため、毎年の財産の状況を把握することができるのです。また税務調査で指摘されるものに損害保険があります。アパートに5年や10年分の火災保険料を前払いしている場合や、JAの建物更生共済を払っている場合には相続財産に該当します。通常の火災保険は掛け捨てなので基本的に相続財産になりませんが、前払いしている保険料があれば、もし解約すれば解約返戻金として戻ってくるためです。JAの建物更生共済は、掛捨てではなく、保障期間満了時に満期共済金が支払われるため必ず解約返戻金相当額があります。
まとめ
税務調査によって指摘を受けて追加納税が生じる場合は別途ペナルティが発生しますので、もれなく申告できるよう、家族との預金をきちんと分けておくこと、贈与を受けた家族が使用できる状況にしておくこと(通帳やカードは受贈した家族が管理して使用した事実を残しておくこと)などが重要となります。